ばあば入院中

祖母が入院している。私は大正生まれのばあばの話が大好きである。昨日聞いた話。
ばあば(仮称:バ)は、高岡の町の真ん中から、砺波のザイゴ(=田舎。現高岡市)に嫁いできた。姑(バの旦那の母親)は、バにろくなものを食わせなかったそうだ。嫁いびりではなく、単に旦那(実の息子)や小姑(実の娘)を優先していたら、嫁に食べさせるものが少なくなったということらしい。そもそも、ザイゴの家には、食料は野菜類しかなかったそうだ。
数年後、「このままでは死んでしまう」と思い、バは家出した。高岡の実家に逃げた。実家に着いたのはお昼ごろ。そのとき出迎えたバの父親は、バにこう言った。「ちょうどいいとこに帰ってきたな。そろそろ、うなぎ焼けるから食え。」高岡の家には、串にささった鰻やフクラギが火鉢の炭で何本も焼かれていた。
バは泣きながらこの話をする。私は大笑いするんだけど。バの父親の言葉は「やさしさ」から出たものではなく、高岡では当然の、昼の風景からこぼれたのものだったのだ。その無意識な言葉が、バを思い出し泣きさせる。
病院のベッドで泣くのはしゃれにならんから、私は笑い飛ばす。